チェーンソー以外の振動工具の取扱業務に係る振動障害予防対策について
「こうちさんぽメールマガジン」2010.6月号より
特別相談員 田内孝也
皆様方の事業場で使用する振動工具の適切な取扱い及びその振動工具を使用することによって生じる恐れのある振動障害等の予防措置は、昭和50年10月20日付け基発第608号及び別添指針に基づき実践されてきましたが、昨年7月10日付け基発0710第2号通達に伴い前述の基発第608号は廃止されました。この度の通達では、工具の発する振動の周波数、振動の強さ、振動ばく露時間による手腕への影響を評価した振動障害予防対策を講じることが有効であるとの見解から、「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」と「振動ばく露時間」により、「日振動ばく露量A(8)」と言う数値を求め、その数値に基づき作業時間を適切に管理し、振動障害を予防することとしています。
要するにポイントは、「日振動ばく露量A(8)」と言う数値を求めることであり、この数値により振動ばく露時間の抑制、工具の選定等による予防措置を検討します。
ここで、聞きなれない名称、難しそうな算式、複雑な図表を目前にすると何だかうんざりしてしまいそうです。でも、決してうんざりしないで頂きたい。じっくりと対処すれば、そんなに難しくもなさそうです。
まず、使用する振動工具の本体に製造元が表示した「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」(表示が無い場合は取扱説明書、製造元のホームページ等で検索可能)を確認し、後はあらかじめ決められた√の算式に従って値を求めます。そして、求めた数値を対数表に示し、示された位置により事業者は対策を講じて行きます。
例えば、コンクリートブレーカーによるコンクリートはつり作業で、求められた「日振動ばく露量A(8)」の数値が対数表の限界値を超えていれば、
- 使用する工具を低振動のものに変更するか、作業工程を自動化、機械化により振動にばく露されない作業方法を検討する。
- 作業工程を見直し、振動にばく露される時間を短くする。
- 作業する者を複数とし、1人当たりのばく露時間を短縮させる。
等の対策を行います。
つまり、「日振動ばく露量A(8)」の数値によりリスクレベルが示される訳ですから、そのリスクレベルに応じた振動障害予防措置を計画段階で検討することができると共に対数表の数値に従い合理的な予防措置の選択が可能となります。
従って、作業を行う者に対し、具体的な作業計画(使用工具、使用時間、使用人員、使用方法等)、作業手順(作業のステップごとに、急所及び留意点を示したもの)を打合せ段階で周知することができ、振動障害予防対策としての効果が期待できるものです。
企業内の衛生又は安全管理の業務に携わる皆様方には、この機会に積極的な振動障害防止へのお取組みを頂きまして、結果予見、結果回避への熟慮をお願い申し上げます。