労災疾病等医学研究普及サイトのご案内 「メタボローム」について
メタボロームの「メタボ」という単語から、お腹の内面や内臓周りに脂肪が蓄積する「内臓脂肪型肥満」のことを連想されるかもしれませんが、メタボロームとは「細胞内代謝によって作られた低分子化学物質の総体」の呼称です。具体的には、核酸(DNA)やたんぱく質のほか、糖・有機酸・アミノ酸など数千種に及びます。このメタボロームを解析することで、疾患の発症を予測できる可能性があり、本研究ではこのメタボロームの解析を通じて、勤労世代が多く罹患する疾患の診断方法確立を目的に、以下の2点に絞って研究を行っています。
本研究の詳細については「労災疾病等医学研究普及サイト」に記載がありますので是非ご覧ください。
https://www.research.johas.go.jp/metabolome/
① 過重労働・ストレス下における心疾患イベントを予測する因子
労働者の過労死予防のため、メタボローム解析により、過労死の要因となっている「心臓疾患」の発症に至る予測因子と、関係因子となりうる定量的マーカーの推測・同定を行います。
【中間報告】
研究1 長時間労働下におけるメタボロームの特徴
残業時間が月80時間を超える勤労者の血液、尿、唾液を試料としてメタボローム解析を行い、残業時間が少ない時期と比較することで、長時間労働時に特有な変化をもつマーカーの検索をしています。
研究2 ACS患者におけるメタボロームの特徴
ACS患者(60歳以下の男性勤労者)と年齢をマッチさせた男性勤労者群の血液、尿、唾液を試料としたメタボローム解析に、代謝系の追加、ノンターゲット分析を追加し、更なるマーカー検索を行っています。
② 早期慢性膵炎の疾患概念の研究と新規診断法の開発
勤労男性に発生率の高い早期慢性膵炎は、職場ストレスと大量飲酒との関連が原因と推測されていますが、未だ明らかではありません。このため、メタボローム解析を通じて早期慢性膵炎の疾患概念を明らかにし早期診断法の開発を行うとともに、早期慢性膵炎と職場ストレス等との関連を検討します。
【中間報告】
アルコール性慢性膵炎患者、アルコール性早期慢性膵炎患者、健常者(飲酒群、非飲酒群)の症例収集を行っています。一部の症例のメタボローム解析からマーカー候補が抽出され、その分析を行っています。