海外赴任者の感染症の予防
産業保健情報誌「よさこい」2005.1月号より
海外における感染症予防の注意点
海外においてはさまざまな疾患に感染する危険が待ち受けています。海外赴任者は出発の際、必要なワクチンを受け、抗マラリア剤、下痢止め、解熱剤などの携行薬を準備するのですが、多くの人はこれで準備が万全だと勘違いしてしまうようです。その結果思いもかけない病気に罹ってしまうケースも沢山あるようです。これらの病気は海外滞在中の心構えや簡単な工夫で防げるものが多く、海外赴任中の感染症予防という観点から留意点を述べます。
飲料水
海外には、さまざまな病原体に汚染された水を飲料水として使用している国がたくさんあることを念頭に置いて下さい。この水は主要な病気(細菌性赤痢、腸チフス、コレラ、A型肝炎等)の感染源となります。一定水準のホテルに宿泊している限りは水の安全性はまず信頼できると思われますが、飲む前には十分な配慮が必要です。
滞在先で供給されている水の質が確かでないときは、必ず沸かしてから飲むようにします。このことは水割用の水や歯磨きの水においても同様です。
食物と酒
海外滞在中、飲食物について行動上注意すべき点。
- 飲料水には注意が必要ですが、ボトル入りの水、ビール、ワイン、熱いコーヒ、紅茶は通常安全です。
- その土地でつくられているチーズ、ヨーグルト、アイスクリームなどの乳製品は殺菌されていない牛乳からつくられていることが多いので注意して下さい。
- あらゆる肉食は十分に火を通し調理を行い、熱いうちに食べることを心がけて下さい。
- 野菜も生野菜は避け、調理したものを食べるようにして下さい。
- 果物やトマトは皮をむいてから食べて下さい。
- 食べたり、調理する前には必ず石鹸ときれいな水で手を洗いましょう。便所に行った後は特に良く洗いましょう。
- 疑わしいときは、食べたり、飲んだりしないようにしましょう。
性行為感染症とAIDS
性行為感染症については、次の注意点を常に心に留めておくことが肝要です。
- 不用意な性交渉に気を付ける。
- コンドームを使用する。
- 酒は危険な性交渉を助長する。
旅行者は不用意な性交渉に及びがちであるが、世界中の多くの場所で性行為感染症は蔓延しています。また、その病気は薬剤耐性かもしれないことを忘れてはいけません。生涯にわたって禍根を残さないよう心がけましょう。
昆虫媒介の感染症
カ、ハエ、マダニなど世界にはいろいろな吸血昆虫が生息しており、マラリア、リーシュマニア症、睡眠病、紅斑熱などの感染症を起こします。このような昆虫の生息している場所では少なくても長袖長ズボンの準備が必要です。
以上