お知らせ

斜め読みしたメタボリックシンドローム

情報誌「産業保健こうち」2007.5月号より

高知産業保健推進センター相談員 坪崎 英治

 この一年ほどの間でメタボリックシンドローム(以下メタボと省略)というものが急に世間で喧伝されるようになりましたが、大方の皆様の反応は何だこれは?のようです。わが国で古来から言われている四百四病の内にはもちろん入らず、病院に行っても治療も出来ず、薬も無いという、難病かと思えばこれが病で亡くなるという人も皆無のようで、医療を専門とする先生方の間でも途惑いに近いものがあるように思います。ところが国は昨年特別医療改革と称して、メタボを中心とした特定検診と特定保健指導を受けることを、40才から74才までの全国民に義務化し、実施の始まりは平成20年の4月と定めました。実施の主体責任者は皆さんが所属している共済組合ですから、、皆さんは来年の4月から組合の連絡を待って、指定された医療機関に御家族ともどもメタボの検診を受けることになりました。

メタボとは何か

体内において糖質や蛋白質、脂質などの基本的な物質の吸収生成や消費を代謝といいますが、これが合理的、スムースでなくなり、いろいろな病気が起こり易くなつている状態を代謝異常つまりメタボリックシンドロームといいます。そして下記の状態があるとメタボの始まりの目安になります。

  1. へそ周りが男性85cm以上、女性90cm以上という太めのウエスト径を有している人は内臓脂肪型肥満の疑いがあり、これがメタボの始まりの第一条件とされる。
  2. 空腹時血糖110mg/dl以上
  3. 血圧130/85mmHg以上
  4. 中性脂肪値150mg/dl、もしくはHDLコレステロール40mg/dl未満

これらの2.3.4の条件の内二つ以上当てはまる人はメタボに該当していると診断されます。この人たちには、将来動脈硬化を起こしやすいグループとして、食習慣の改善を中心として、運動指導も加えた特定保健指導が行われます。現在ところまだ大規模長期間にわたる研究は無いようですが、該当者は非該当者に比べ20年間で心筋梗塞が1.8倍多く、糖尿病発症も40%ほど多発する等の報告がみられます。

メタボが何故このように重視されているのか

上記に述べましたように1から4までの異常値はいずれも軽微であり、個人としてはやや水位があがった程度で、あまり深刻に受け止めないのが普通でしょう。また一般の臨床医も患者さんのこれよりはもっと深刻な病状に対しては積極的に対応するでしよう。しかしながら川の上流に位置する個々人においては軽微な水位の上昇でも、加齢とともにいずれ重大化して、治療を始めるパーセンテージがふえてきます。多くの高齢になった人達の使う医療費は下流では集まって合算され、水位を極端に上げ、日本国の経済を破綻させるような氾濫に導くのです。

日本国が直面している重要課題

現在わが国が直面している重要課題のうち、特に問題になるのが少子高齢化社会の到来です。早くも今年から日本の人口のなかでは大きな部分を占めている団塊の世代が定年退職を迎えるようになりました。社会保障の担い手がどんどん減り始めるのです。これに対応する新しく労働年齢人口になった人達は約三分の二程度しかいないようです。そしてこれは紛れもない真実ですが、人は加齢とともに多病になるのです。医療費を沢山使うようになるのです。現在年間32兆円といわれている国民医療費は近い将来50兆円にも達するといわれています。若い世代はこの社会保障費を負担しきれるのでしようか。

嬉しいことに多くの研究者の実験では、このメタボ退治のための特定保健指導を真面目に実行すれば、比較的容易に短期間でウエスト径は数センチ位は小さくなると報告されています。私たちは勿論国の将来も大事とおもいますが、それよりも私たち自身のためにメタボを退治して、元気でかつ医療費をあまり使わない健康老人になるようにしませんか。

平成19年3月14日

以上

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