肺年齢
「こうちさんぽメールマガジン」2010.1月号より
産業医学担当相談員 町田 健一
呼吸器系は形態および機能面で加齢変化が最も顕著に現れる臓器のひとつです。呼吸機能検査の中では、簡便で日常診療に有用な検査はスパイロメトリーです。最大吸気から完全に息を吐ききるまで呼出できる量(肺活量)やできるだけ勢いよく息を吐きだした最初の1秒の量(1秒量)などを測定し、年齢や性別、身長から計算した予測値と比較します。呼吸器系の老化は、肺弾性収縮力の低下(1秒量の低下)、胸壁コンプライアンスの低下(胸壁が硬くなり、肺活量が低下)、横隔膜筋力の低下などが主なものです。血圧の測定値や血糖値、コレステロール値などメタボリックシンドロームの検査値と異なり、呼吸機能の数値は分かりにくく、さらに数値自体から「どの程度の異常か」を自覚することは困難です。そこで、肺の状態を「年齢」という指標を用いて呼吸機能異常を分かりやすく自覚してもらうようにしたものが「肺年齢」という考えです。日本人の年齢に応じた1秒量の正常予測値は計算式から求められ、この式を年齢について解いた
男 年齢=[0.036×身長(cm)-1.178-1秒量(リットル)]/0.028
女 年齢=[0.022×身長(cm)-0.005-1秒量(リットル)]/0.022
に身長と実際に測定した1秒量の値を入れると年齢が計算されます。
これが、その人の呼吸機能的な年齢ということで「肺年齢」と定義されます。
実年齢と「肺年齢」との差から呼吸機能の異常を早い段階で認識してもらう概念であり、同性・同世代と比較して自分の呼吸機能がどの程度であるか確認できます。呼吸機能は20歳前後をピークに加齢とともに低下し始めます。「肺年齢」を知ることで肺の健康意識を高め、健康維持や禁煙指導、呼吸器疾患の早期発見・治療に活用することができます。最近は肺年齢対応スパイロメトリーなども販売されています。
(呼吸器疾患診療マニュアルなどから引用)