新しい糖尿病診療ガイドライン
「こうちさんぽメールマガジン」2011.3月号より
産業医学担当相談員 町田 健一
糖尿病はインスリン作用不足による慢性高血糖を示す疾患群で、高血糖が長くつづくと全身の細小血管がもろくなり、動脈硬化・視力障害・腎障害・神経障害などの合併症を突然発症する。平成22年7月に糖尿病の新しい診断基準が示された。
- 空腹時血糖値126mg/dl以上、
- 経口糖負荷試験2時間値200mg/dl以上、
- 随時血糖値200mg/dl以上、
- HbA1c6.1%(日本糖尿病学会値)以上
のいずれかを認めた場合に「糖尿病型」と判定される。別の日に再検査で再び「糖尿病型」が確認されれば糖尿病と診断する。ただし、HbA1cのみの反復検査による診断は不可、血糖値とHbA1cが同一採血で糖尿病型を示した場合は、初回検査のみで糖尿病と診断され、また、血糖値が「糖尿病型」を示し、口渇・多飲などの糖尿病の典型的症状がある、或いは確実な糖尿病網膜症があれば糖尿病と診断する。
糖尿病の治療目的は、糖尿病症状を除くことは勿論、合併症の発症や進行を防ぎ、健康人と同様な日常生活を保ち、健康人と同じ寿命を全うすることである。インスリン依存状態ではインスリン治療を行い、インスリン非依存状態では、十分な食事・運動療法を数ヶ月間行っても良好な血糖コントロールが得られない場合、経口血糖降下剤で治療する。早急な全身管理が必要な時など経口血糖降下剤によっても血糖コントロールの目標が得られない場合はインスリンで治療する。血糖コントロールの指標と評価は、優・良・可・不可に分けられる。
優:HbA1c,空腹時血糖、食後2時間血糖値の上限を5.8%、110mg/dl、140mg/dl
良:6.5%、130mg/dl、180mg/dl(細小血管症の発症予防や伸展抑制の基準として選択)
可:治療の徹底或いは治療法の変更により改善の努力を行うべき領域(不十分・不良)
不可:HbA1C8.0%以上、空腹時血糖値160mg/dl以上、食後2時間血糖値220mg/dl以上(細小血管症への伸展の危険が大で、治療法の再検討を含めて何らかの行動を起こす)
一般には、低血糖を頻繁に起こさずコントロール評価の「優」または「良」を目標とする。血糖以外のコントロール目標値は、BMI22、血圧130/80mmHg未満、LDLコレステロール120mg/dl未満、中性脂肪150mg/dl未満、HDLコレステロール40mg/dl以上などがある。
メタボリックシンドロームを解消して、糖尿病の予防と改善に取り組みましょう。
(日本内科学会雑誌:診療ガイドラインなど参考)