お知らせ

熱中症を予防しよう

産業保健情報誌「よさこい」2004.5月号より

国際情報・労働衛生研究振興センター
上席研究員 甲田 茂樹

最近、マスコミでも取り上げられるようなったため、熱中症という病名は徐々に私の生活の中で普通に使われるようになってきました。熱中症とは、「熱に中(あた)る」ことによって発生する病気で、屋外、屋内を問わず、高温環境にばく露することで生じる健康障害の総称で、梅雨時から盛夏、秋口にかけて注意が必要な病気です。

熱中症とは

熱中症は大きく三つの病気(熱虚脱症、熱けいれん症、熱射病)に分かれます。人体に高温環境による温熱負荷が加わると、皮膚の毛細血管が拡張して血液の循環(末梢循環)が増えたり、発汗したりすることで、皮膚温の上昇を抑えようとする防御的作用が働きます。しかし、高温負荷が許容限度を超えると、末梢循環の増大により心臓への血液の戻りが少なくなることで脳などへの重要な臓器への血流が保てなくなり、血圧低下や脈拍微弱、頭痛、疲れやすい、めまいなどの症状が起こったり(熱虚脱)、また、発汗過多による水分と塩分の喪失が血液中の電解質のバランスを崩し、大きな筋肉のけいれん(熱けいれん症)を引き起こすようになります。この熱虚脱や熱けいれん症は熱中症の中でも比較的軽症な状態です。さらに強い高温負荷が継続的に続くと、発汗が停止し、本来備わっている温熱調節機能が崩れて、体温の上昇をみるようになります。この状態では、顔が紅潮し、行動にミスが目立ったり、真っ直ぐに歩けなくなり、ついには、意識消失を引き起こしたりします。この状態は熱中症の中でも最重症の熱射病(日射病)であり、適切な治療を迅速に行わないと死亡するケースもありま
す。

どのような職場で熱中症は発生するか

高温環境下での人体への温熱負荷の強さの程度は、単に外気温だけで決まるのではなく、湿度や熱輻射、気流、労働者の労働強度の要素が関与します。専門的にはWBGT(湿球黒球温指数)を用いて熱中症発症のリスクを評価します。WBGTはその計算式から湿度に強く影響され、さらに屋外作業では太陽光からの熱輻射の影響を強く受けます。

従って、真夏の炎天下での作業や屋内での強い熱輻射にばく露する作業だけでなく、湿度の高い梅雨時の屋外作業などでも、熱中症発症の危険性が高いと言われています。事実、熱中症は6月頃より発生し、7月に入ると急激に増加するのが例年の傾向になっています。
熱中症を予防するために

熱中症を予防するためには、まず、温熱ストレスへのばく露を減らすことができればよいわけです。熱源(屋外では直射日光)からの余計なストレスを減らすために「なるべく日陰を活用する」「遮熱ボードを用いる」などの対策を講ずるべきです。つぎに、熱中症は高温環境下で発症する急性の健康障害であるため、作業者が熱中症の初期症状(表)を理解しておくことが重要となります。このような症状を感じた場合には、木陰や涼しい場所で休み、スポーツ飲料で水分と塩分の補給をするようにしてください。ここで注意したいことは、水だけ補給していると、発汗がより促進し、熱けいれん症がひどくなるので、避けてください。

この他、不規則で偏った食生活をしている人、肥満や二日酔いの状態、さらには、アトロピンやベータ・ブロッカーなどの発汗抑制や皮膚血流の減少をもたらす薬剤を服用している場合で、熱中症にかかりやすいとされているので注意が必要です。

熱中症の早期発見・予防のための10箇条

  1. 炎天下の作業や暑い職場には熱中症の危険があることを心得る。
  2. 梅雨時でも熱中症は発生するので油断してはいけない。
  3. 余計な温熱ストレスを減らすため、休息や休憩は涼しい場所で過ごす。
  4. 温熱職場には1週間程度かけて体を慣らす。
  5. 熱輻射を反射するような白い作業服や帽子などを着用する。
  6. 作業中に次の症状が出たら熱中症の初期症状である可能性が高いので直ちに休息する。
    ・「前胸部の皮膚発疹」「めまい」「吐き気」「ふらつき」「顔色が悪い」「頭痛」
    ・「疲れやすい」「下肢や上肢の筋肉の痛みやけいれん」
  7. 日陰や涼しい場所でしばらく休み、スポーツ飲料を200ccほど補給する。
  8. 日頃からバランスの良い食事をとる。
  9. 適度な運動を日頃より行い、ウエイトコントロールに心がける。
  10. 二日酔いで仕事に臨まない。

以上

ご相談・ご要望を受け付けています。

ご利用時間:午前8時30分~午後5時15分(土・日曜日・祝祭日、年末年始除く)

PAGE TOP