お知らせ

食生活と生活習慣病

産業保健情報誌「よさこい」2005.5月号より

高知県衛生研究所 保健科学部主任研究医 森山ゆり

赤ちゃんから高齢者までの健康づくりは、バランスの良い食生活習慣で

生活習慣病は偏った生活習慣によって引き起こされますが、特に食生活が大切。近年、葉酸というビタミン不足や、それに伴うホモシステインの増加は、3大死因の癌・心疾患・脳血管障害、さらに、アルツハイマー病、神経管閉鎖障害(胎児の無脳症や二分脊椎)、流産などの原因の一つとして注目されています。

一人一人が自らの判断で健康づくりを進めることが大切な時代

高知県の病気別3大死因

高知県民の死因の6割は癌、心疾患、脳血管障害で死亡し、いずれの疾患も全国ワースト5に入っています。心疾患は働き盛りの突然死、脳血管障害は寝たきりや認知症(痴呆)の原因になります。医療費や介護保険の節減のためには、悪い生活習慣を見直し、自ら改善を実践することが大切です。

ホモシステインが高いと脳梗塞にかかりやすい

ホモシステイン濃度と脳梗塞の発症率

高知県民の死因の3割を占める心疾患と脳血管障害は動脈硬化が病因。高知県衛生研究所、筑波大学、大阪府立健康科学センターとの共同研究で、ホモシステインが高い(11µmol/L以上)と動脈硬化を起こしやすく、脳梗塞に4倍かかりやすいことを日本人のデータで初めて明らかにしました。

ホモシステインは男性が高い。葉酸とビタミンB12で下げることができる

高知県民のホモシステイン濃度の平均値

ホモシステインは必須アミノ酸のメチオニンが代謝される際に一時的に作られる悪玉アミノ酸。葉酸とビタミンB12・B6が不足すると高くなります。特に葉酸とビタミンB12・B6が大切。

高知県でホモシステイン濃度が高い(11µmol/L以上)人は男性の3割、女性の1割います。特に若年層の葉酸不足は深刻で、ホモシステインを下げて、生活習慣病の1次予防を行うには、禁煙と和食を中心としたバランスの良い食生活習慣を身に付けましょう。

胎児の発育に葉酸は不可欠なビタミン。妊娠可能な女性は葉酸不足に要注意!

欧米諸国では1992年~94年にかけて「神経管閉鎖障害児は葉酸摂取で予防できる」という勧告を出し、葉酸の摂取量を1日400µgにしています。さらに、アメリカでは1998年に小麦粉などの穀物に葉酸の添加を義務付け、二分脊椎などの神経管閉鎖障害児の出生は激減しました。一方、日本の発生頻度は先進諸国の中で最も高くなり、2000年12月、厚生労働省(旧厚生省)は妊娠可能な女性に1日400µgの葉酸摂取を勧めています。妊娠前から葉酸が不足しないことが重要で、健康補助食品(サプリメント)の活用も推奨しています。

葉酸・ビタミンB12を多く含む食品
葉酸を多く含む食品
食品名 葉酸 B12
緑茶 1500 0
生うに 360 1.3
えだまめ(ゆで) 260 0
和種なばな(ゆで) 190 0
アスパラガス(ゆで) 180 0
そらまめ(ゆで) 120 0
ブロッコリー(ゆで) 120 0
ほうれん草(ゆで) 110 0
いちご 90 0
にら 77 0
モロヘイヤ(ゆで) 67 0
ビタミンB12を多く含む食品
食品名 B12 葉酸
しじみ 62.4 17
焼きのり 57.6 1900
すじこ 53.9 160
あさり 52.4 11
いくら 47.3 100
にわとりの肝臓 44.4 1300
牡蛎(かき) 28.1 40
うるめいわし 24.7 44
さんま 17.7 10
にしん 17.4 13
塩鮭 6.9 11
単位:µg/可食部100g(五訂日本食品標準成分表)

食生活習慣に気を付けながら料理をすることが好きな女性はホモシステインが低い

2003年に行った男女20歳~59歳のアンケート調査では、葉酸やホモシステインを知っている割合はわずか1割程度でした。また、「癌・高血圧・糖尿病・動脈硬化などの生活習慣病は特に食生活と関連が深いので気を付けるようにしている」と答えた人の割合は男性の26%、女性の45%でした。しかし、食生活習慣に気を付けながら料理をすることが好きな女性はホモシステインが低く、動脈硬化を防ぐ抗酸化ビタミンが高いことも分かりました。

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以上

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