お知らせ

事業所での歯科健診の重要性

産業保健情報誌「よさこい」2006.5月号より

高知産業保健推進センター特別相談員 高知県歯科医師会理事 奴田原 淳

近年、歯科において8020運動が推進され、国民に広く知られるようになり、口の健康への関心も高まってきています。国では、「健康日本21」・「健康増進法」、また高知県では「よさこい健康プラン21」で歯・口の健康づくり計画が策定され、それぞれの目標値に向けての取り組みが行われています。

しかし、高知県の現状は図1のように「8009」、80歳で残存歯数の平均が9本、20本以上自分の歯を持っている、8020を達成している人の割合は13%(図2)にとどまっているのが現状です。歯の喪失は40歳代から始まり、60歳代から急激に進んできます。
「8020」目標と高知県の現状(H13)
20本以上自分の歯を持っている人の場合


歯を失う原因

歯が失われる原因は、図3のように歯科での2大疾患であるう蝕(むし歯)と歯周病がほとんどであり、歯周病が50%を占めています。

平成13年度に高知県で実施された成人歯科疾患実態調査では、40歳ですでに重篤な歯周病に罹患している(CPIコード3以上)者が48.2%という結果が出ています。

歯周病は、口の中の細菌によって発症する感染症です。初期には自覚症状があまりなく、進行して痛み・歯肉の腫れ・噛めないなどの症状が出たときには、重症化していて回復困難な状態になっていることが多い病気です。しかし、初期の状態であれば適切なケアを行うことにより健康な状態に戻ることもできます。ですから歯周病を初期の段階でとどめるためにも、事業所での健診やかかりつけ歯科医での定期的な健診・口腔ケアについての正しい知識を持つことが重要です。


ライフステージ別

歯・口の健康は各ライフステージ別に見ると、図4のように0~18歳までは母子・学校保健法で管理されています。40歳以降は老人保健法で法的整備がなされ、市町村における節目検診(40・50・60・70歳)において歯周病検診が行われています。しかし、受診率が低いのが現状です。18~39歳までは、一部の者は労働安全衛生法、地域保健法で健診が行われますが、一般的には定期的な健診受診機会が少なく口の健康管理が行き届かない時期です。

歯周病羅漢状況平成16年度高知県で、県内の大学生(18~22歳)を対象に早期歯周病予防対策事業として歯周病健診を行った結果(図5)う蝕(むし歯)は少なくなっていますが、約半数が「歯石沈着」という初期の歯周疾患に罹患し、歯肉からの出血がある軽度歯周病の人を合わせると、約75%に歯周に何らかの異常が見られるという結果が出ています。このように、歯の喪失予防のために重要な時期である、成人期、高等学校卒業後から働き盛りの年代に、歯科保健対策が望まれます。予防のための定期的な歯科医療機関への受診、歯科医療機関と連携した早期歯周疾患予防プログラム(健診・保健教育・指導)等を策定し、取り組むことが、作業能率の向上につながる等の就業中のメリットだけでなく退職後の豊かな生活につながっていきます。

以上

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