できていますか、社内の労働衛生教育
「こうちさんぽニュース」2010.10月号より
高知産業保健推進センター特別相談員 田内 孝也
平成22年度全国労働衛生週間が始まりました。今年のスローガンは「心の健康維持・増進、全員参加でメンタルヘルス」です。不景気の続く中、仕事が無い、働く場が無いという話を良く耳にする一方で、仕事が有り過ぎて荷重労働による健康障害やメンタルヘルス不調に悩む労働者は増加傾向にある。何と矛盾した話だろうか。
働く人の健康管理は心、体を問わず労働衛生に於ける最も重要な項目であり、それが身体の健康なのか、心の健康なのかの違いだけだと単純に考えれば取組は前向きになれるものだが、どうもカタカナ文字が出てくると何故か抵抗感があることも残念ながら事実である。
さて、私はその職業柄、「安全教育」と呼ばれる活動にはこれまで数多く係って参りました。
高い場所での作業は、この措置と、これ使って下さい。また、これはしてはいけません等々。かなり具体的な内容であり、危険源の特定も明確に行ってきたように思います。ところが衛生教育となるとどうでしょう、衛生自体がどうも個人の守備範囲が広いように思えて、作業環境改善、作業管理の改善並びに健康診断での結果は有効に使って下さいとか、非常に抽象的な内容に終始してきたように記憶しています。
ここで事業者の皆様方に「できていますか労働衛生教育」とお尋ねしたい。また、職場の衛生管理者、安全衛生推進者の皆様にも同様のことをお尋ねしたい。小職のように反省すべき点は無いのか、特に職場に於ける労働者の健康不良は事故・災害はもちろんのこと、生産性、出来栄えにまで直結していると言っても過言ではないのです。
ご提案ですが、この労働衛生週間中に社内の衛生管理体制を整備してみませんか、誰が見ても分かるような明確な組織を作ってみませんか。「衛生管理者は○○さんで、その職務はこれこれだ」と、事業主自らが率先して社内に周知して下さい。そして、安全衛生推進者の選任に関しても同様です。報告義務が無いからと言って蔑ろにしないで下さい。次に、労働者の健康の保持増進と職業性疾病の防止、作業環境を少しでも良くする為に労使が協議する場(衛生委員会とか固い名称で無くても良い)を毎月定期に開催しましょう。
労使が協力し、全社が一丸となり仕事の確保、働く場の確保を行う、何でも話し合える職場風土こそが、心の労働衛生管理の場であると考えます。
皆様方の職場にとって、この第61回目の歴史ある「全国労働衛生週間」がただ単にポスター掲示と、資料配布、そしてスローガンを連呼するだけの帳消し年度行事で終わらせないことを心よりご期待申し上げます。