お知らせ

労働安全衛生関係法令のあれこれ

「こうちさんぽメールマガジン」2009.1月号より

労働衛生関係法令担当相談員 樋口 悠紀夫

前回に引き続き、労働衛生関係の法令等に関して思い浮かぶことを、つれづれに書いてみたいと思います。

徒然記 その5

兼好法師の徒然草の第109段に、次の記述があります。

少し長くなりますが、原文の一部をそのまま引用してみたいと思います。

『高名(かうみよう)の木のぼりといひし男(をのこ)、人をおきてて、高き木にのぼせて、梢(こずえ)を切らせしに、いと危く見えしほどは言う事もなくて、降(お)るる時に、軒長(のきたけ)ばかりになりて、「過(あやま)ちすな。心して降りよ」と言葉をかけ侍りしを、かばかりになりては、飛び降るとも降りなん。如何にかく言うぞ」と申し侍りしかば、「その事に候ふ。目くるめき、枝危きほどは、おのれが恐れ侍れば、申さず。過ちは、やすき所になりて、必ず仕(つかまつ)る事に候ふ」と言ふ。・・・・・』とあります。

この随筆の中で兼好法師が言いたかったことは、皆さんも思われるとおり、「過ちというものは、高くて危険な所より、低く容易な所になって怪我などをするものだから、一層、注意しなければならない。」ということではないかと思います。

鎌倉時代末期から南北朝の乱世・混乱の時代を生きた人物が、安全に対する深い理解と洞察力を持っていたことには、驚きとともに親しみを感じるものです。

ところで、労働安全衛生規則では、高さが2メートル以上の箇所で作業を行う場合には、墜落防止の手すりの設置や安全帯の使用を使用者及び労働者に義務付けていますが、これは比較的低い場所でも労働災害が多発している現状を踏まえて、法令の中にこの条文が盛り込まれているわけです。

労働衛生面においても、例えば、腰痛予防対策に関して、重量物取扱い作業に伴う腰痛予防対策の厚生労働省通達の中で、「単に重量制限を守るのみでなく、取扱い回数等、作業密度を考慮し、適切な作業時間、人員配置等に留意しつつ、諸対策を講ずること。」とあります。

職場の労働衛生や安全を確保するためには、最後まで気を抜かず、きちんとした対策を実行していくことが、何より大切ではないでしょうか。

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