防じんマスク着用の注意点

産業保健情報誌「よさこい」2007.5月号より

高知産業保健推進センター相談員
門田労働衛生コンサルタント事務所長 門田 義彦

防じんマスクなどは、日常的に使用しているうちに、つい安易に着用してしまいます。間違って使用すると、効果が期待できなくなったり、健康障害をひきおこしたりします。防じんマスクを使用する際に、確認する注意点を以下にあげます。作業場ごとに責任者を決めて、これらの指導や管理にあたるようにしてください。

  1. 着用者が着用目的をしっかり理解しているか?
  2. 作業場の環境に適合したものを選択しているか?
  3. 着用者は正しく着用しているか?
  4. フィルターの交換や保管など管理が十分にできているか?

防じんマスクの着用目的は、鼻や口から粉じんや固体の有害物質を、体内に取り込まないようにすることです。空気中に漂っている粉じんなどは微細で、肉眼ではなかなか見ることができません。こういった微細な粒子が、体内の奥深くに侵入して、じん肺などの病気を引き起こします。たとえタオルで口と鼻をおおっても、微細な粒子は生地をすり抜けてしまうので、効果は全くありません。
防じんマスクは、固体粒子を対象としています。酸欠空気や、有害な蒸気・ガスに対しては全く効果がありません。塗装作業場で、使い捨て式の防じんマスクを着用しているのを見かけますが、たとえ活性炭を使っていても防臭目的ですので、有機溶剤蒸気には効果がありません。塗装場では、有機溶剤用の防毒マスクを使用してください。また、蒸気・ガスと粉じんが同時に存在するような作業場では、防毒マスク吸収缶の前に装着する防じんフィルターや防じん防毒兼用マスクを使用してください。
防じんマスクの選定は、必ず国家検定合格品からするようにします。花粉対策のマスクなどは、作業場の粉じんに対しては効果がありません。国家検定合格の防じんマスクには合格標章がはり付けられていますので確認してください。
防じんマスクの種類は、構造上、使い捨て式(記号 D)、取り替え式(記号 R)及び電動ファン付のものがあります。これらは、有害物質の種類や粉じん濃度及び作業内容に応じて選択してください。
フィルターには粉じんの捕集効率による等級があります。捕集効率が99.9%以上は区分3、95.0%以上は区分2、80%以上は区分1となっています。また、捕集効率を試験する際に使用した粒子により、記号LとSで区分されています。作業場の粉じんに混じってオイルミストなどがあり、湿った雰囲気の場合は、記号L(リキッド)のものを選択してください。
またマスクにはサイズがあるので、顔の大きさにそれぞれ適合したサイズのマスクを選択しましょう。


マスクの一般的な選択の目安としては、表に示すものがあります。

表 防じんマスク選択の目安「粉じんマスクの選択、使用等について」 平成17年2月基発第0207006号を一部変更

粉じん等の種類及び作業内容 使用すべきマスク
オイルミスト等がない場所 オイルミスト等が混在する場所
  • 放射性物質がこぼれた時等による汚染のおそれがある区域内の作業又は緊急作業
  • ダイオキシン類のばく露のおそれがある作業
  • 石綿取扱い作業(レベル3で発じんが少ない場所に限りRS2,RL2も可)
  • その他上記作業に準ずる作業
RS3 RL3 RL3
上記以外の粉じん作業のうち以下のもの

  • 金属のヒューム(溶接ヒュームを含む)を発散する場所における作業
  • 管理濃度が0.1㎎/?以下の物資の粉じんが発散する場所における作業
  • その他上記作業に準ずる作業
RS2,RS3
DS2,DS3
RL2,RL3
RL2,RL3
DL2,DL3
上記以外の粉じん作業 RS1,RS2,RS3

DS1,DS2,DS3

RL1,RL2,RL3

DL1,DL2,DL3

RL1,RL2,RL3

DL1,DL2,DL3

マスクの着用は、あごのほうからマスクを顔面にあてて、締めひもを締めるようにします。この時、締めひもは緩すぎてもまた強く締めすぎてもいけません。

取替え式や電動ファンつきのマスクを着用した際には必ずフィットテストを実施するように習慣づけましょう。フィットテストは、フィルター以外の部分から空気の漏れ込みがないか密着性を確認するものです。これには、着用後、まずフィルターなどの空気流入部分をフィットテスターで覆います。フィットテスターがない場合には、手のひらでフィルター部分を完全に覆ってください。この状態で息を吸ったときに、空気が吸引されず、マスクが顔に張りつくのが確認できれば、密着性の状態は良好で正しく着用できています。マスクに漏れがあったまま気がつかず、有害な場所で作業をすると危険です。ただし、使い捨て式のものは構造上、フィットテストができません。使い捨て式のものは軽くて作業しやすいことから現場でよく使われますが、密着性の確認ができませんので、石綿などの有害性の高い粉じんのある現場では使用しないでください。

フィルターの交換は定期的に行いましょう。交換時期については作業環境測定結果などを参考にしてください。定期的な交換をするために、管理者はフィルターの交換時期を記録してください。また交換時期前でも目詰まりして通気が悪くなったときには、早めに交換するように指導しましょう。

マスクの保管は、ホコリのない乾燥した場所にしてください。直射日光の当たる場所、高温となる場所及び粉じん作業場内は避けてください。また締めひもをフックなどにかけて、マスク本体を吊すのはやめましょう。締めひもの弾力が失われ、着用したときの密着性が失われてしまいます。保管例として、マスクが入る大きさの食品保存用密閉容器や密閉袋などに乾燥剤とともに保管する方法があります。

以上防じんマスク選択、着用における注意点を挙げましたが、作業場に応じたマスクの選択や着用訓練については、お気軽に当センターに相談してください。

以上

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