産業保健情報誌「よさこい」2006.9月号より
高知産業保健推進センター相談員 門田労働衛生コンサルタント事務所長
門田 義彦
局所排気装置や喫煙室で、有害物質やたばこの煙が吸引されていることの確認や拡散の状況を見る際、スモークテスターを使えば簡単に空気のながれを調べることが出来ます。
工場やオフィスなどの空気環境を制御する装置を点検する際には、空気のながれ(風向)を確認する必要があります。こういった場合は熱線式風速計やスモークテスターを使用します。このうち熱線式風速計は、風速を正確に測ることが出来ますが、風向を見ることは出来ません。一方でスモークテスターは、風速を正確に測ることができませんが、火気を使用せずに白煙を出すので簡単に安全に風向を見ることができます。
仕組み
スモークテスターは、発煙菅とゴム球がセットとなっています。この発煙菅の中には空気中の水分と反応して白煙を発する薬品(塩化スズ)が封じ込められています。発煙管内にゴム球で空気を送ることで白煙が発し、室内の空気のながれを見ることが出来るわけです。
SnCl4+2H2O→SnO2+4HCl
使い方
- 附属のアンプルカットで発煙管の両端の5㎜程度の場所にそれぞれキズをつけます。
- 発煙管の一方の先端にカット用のカバーをつけます。
- カット用カバーを持って両手の指で押し曲げるようにして先端を折ります。この時に指をガラス片などで傷つけないように注意してください。
- もう一方の先端も2.3.の手順で折ります。
- ゴム球出口のゴム管に、発煙管を差し込みます。差し込む際は、発煙管の先端のガラスが鋭くなっていますので、指を傷つけないように慎重に差し込んでください。
- ゴム球を数秒ゆっくりと押して、空気を発煙管に送ります。発煙管から白煙が流れます。
- 白煙が流れない場合は、発煙管内に結晶ができていることが多いようです。このときには、ゴム管から発煙管をはずし、附属のステンレス針で結晶をほぐして、再度ゴム管に差してみてください。
- 白煙は15分間ほど発煙させることができます。
- 使用後は発煙管をゴム球からはずし、両端にカバーをつけてください。
注意:この白煙には刺激性があります。目や鼻や喉などの粘膜を刺激しますので、吸い込まないようにしてください。もし吸い込んだときにはうがいをしてください。また、発煙管を破損した場合は、直接手で触れないように安全手袋をして、水を入れたポリバケツに入れて廃棄してください。
点検の位置
局所排気装置フードの場合
囲い式フードではフード開口面の内側で白煙を流して、白煙がフード内部に確実に流れ込むことを確認して下さい。白煙がフードの外側に漏れないことが必要です。外付け式フードでは、フードの開口面ではなく、作業者が有機溶剤などの有害物質を実際に取り扱う位置で白煙を流し、白煙がこの位置からスムーズにフードに流れ込むことを確認してください。
喫煙室の場合
非喫煙室から、喫煙室に気流が流れていることが必要です(風速0.2m/s以上)。このため、喫煙室の出入口扉の上、中、下部のそれぞれで白煙を流して、全ての位置で喫煙室内に白煙が流れていくことを確認してください。また喫煙室内の煙草を吸う位置で白煙を流して、換気扇等に確実に吸い込まれることを確認してください。
その他
室内の風速を測定をする時、熱線式風速計だけだとエアコンなどの無関係な気流の影響がわかりません。こういった場合は、スモークテスターと併用して、スモークテスターの白煙を観察しながら測定をするといいでしょう。
喫煙室内で、同時に喫煙することのできる人数や換気扇に近づいて喫煙するなどを指導する際に、喫煙者の前で実際にスモークテスターで白煙を流して実演すると、空気の流れが視覚化されますので理解を得られやすくなります。
以上のとおり、スモークテスターを使うと簡単に空気の流れを目で確かめることができます。局所排気装置や分煙室の効果確認や定期点検時、有害物質の拡散を見るのに最適ですので、ぜひ利用して下さい。
以上