産業保健情報誌「よさこい」2006.5月号より
高知産業保健推進センター相談員
東洋電化工業㈱分析センター所長 中西 淳一
はじめに
平成8年2月21日付け基発第75号「職場における喫煙対策のためのガイドライン」によりますと、作業環境の空気環境を浮遊粉じんの濃度を0.15mg/m3以下及び一酸化炭素の濃度を10ppm以下とするように必要な措置を講ずることとされています。
粉じん濃度は、ろ過捕集による重量法や相対濃度計により測定が可能ですが、たばこ煙に由来する粉じん量あるいは含有率はどれ位有るのか知りたいという意見を良く伺います。そこで、今回は、たばこ煙モニタ-TM-1型(柴田科学株式会社製)についてご紹介します。
特徴と原理
この装置は、浮遊粉じんの濃度のみしか測定することができない一般の相対濃度計とは異なり、粉じんの中のたばこ煙の含有率を測定することができるという特徴を有しています。
たばこ煙の反射分光特性は、波長が短くなるにつれ反射率が低下してきます。一方、浮遊粉じんの反射分光特性は、たばこ煙に比べて波長による変化がわずかです。本装置は、この様なたばこ煙と浮遊粉じんとの反射分光特性の違いを利用して、たばこ煙の含有率を測定しています。
浮遊粉じんとたばこ煙の反射分光特性(波長700nmに対する相対強度)
波長(nm) | 300 | 400 | 500 | 600 | 700 |
浮遊粉じん | 89 | 88 | 92 | 96 | 100 |
たばこ煙 | 3 | 28 | 62 | 86 | 100 |
操作方法
- 単2乾電池(6本)を装着します。
- POWERスイッチを押し、10分間ウォーミングアップを行います。
- 濾紙を交換します。
- 吸引流量を調整します。START/STOPスイッチを押して、ポンプを作動させてから、FLOW調整ノブで、流量を2.6L/minに合わせます。
- バッテリーチェックを行います。BATT.ボタンを押して、表示値が550以上であればOKです。550未満の場合は乾電池を交換して下さい。
バッテリーチェックが終了した時点でSTART/STOPスイッチを再度押してポンプを停止します。 - λ1(波長370nm)とλ2(波長620nm)の初期値を調整します。
表示切り替えスイッチをλ感度調整ノブの方へスライドして、O.D.(Optical Density)表示値「000」に調整します。次に、表示切り替えスイッチをλ2感度調整ノブの方へスライドして、表示値「000」に調整します。 - TIME設定ノブを回して測定時間を設定します。通常、測定時間は1分でOKです。
- START/STOPスイッチを押して測定を開始します。
- 設定時間が経過しますとポンプが自動停止し、START/STOPスイッチ上のランプが消灯します。
- 表示切り替えスイッチをλ1の方へスライドして表示値O.D.(λ1)を読み取ります。
- 表示切り替えスイッチを中央の(%)の方へスライドして表示値(%)を読み取ります。
粉じん濃度の算出
一般の事務所等における粉じん濃度は、次式で算出します。
粉じん濃度(mg/m3)=0.01×O.D.(λ1)/T
※ここで、Tは、測定時間(分)のことです。
粉じんの中のたばこ煙の含有率の算出
粉じん中のたばこ煙の含有率は、表示切り替えスチッチを中央の(%)の方へスライドして表示値(%)です。
あなたの職場でも、是非、たばこ煙モニタ-TM-1型を使って、粉じん中のたばこ煙の含有率を測定してみてはいかがですか。
以上